フィンランド ユバスキュラ大学

2024年度 / ヨーロッパ <フィンランド>

掲載日:2025年11月10日

NEW ユバスキュラ大学

K.M

(人間社会学域国際学類 4年)

体験報告

  • <はじめに>
    私は2024年8月から約10か月間、フィンランドのユバスキュラ大学に留学していました。この報告書では、私自身の留学先の選択や準備、留学中の経験について、学業面を中心に振り返っていきます。派遣留学を検討している人に留学の魅力が伝わったり、留学先の選択や準備についてイメージしやすくなったりすれば幸いです。

    <留学の動機・目的とユバスキュラ大学を選んだ理由>
    長期留学するということ自体は、高校生のときから決めていました。学ぶ領域については、私はもともと誰もが暮らしやすい社会に幅広く関心があり、大学入学後に、障害をはじめとした特別なニーズのある子どもの支援に関心を持ちました。特に、多職種連携や教育制度・課程の柔軟さといった点で日本よりも先進的と言われている、北欧の実践を学びたいと考えるようになりました。そこで、北欧における金沢大学の協定校の中で唯一、特別支援教育に特化した課程を設けているユバスキュラ大学を選択しました。
    具体的な留学の目的としては、第一に、理論と実践の両面から、特別なニーズのある子どもに対する教育的支援が現地でどのように行われているのかを学ぶことを設定していました。第二に、教育現場だけでなく社会全体において、特別なニーズのある子どもを生涯にわたり包摂するために重要な視点についても、理論と実践の両面から培いたいと考えていました。

    <留学前に取り組んで良かったこと>
    私が留学前に取り組んで良かったことは、まず、留学の目的を明確化することです。目的を言語化する作業を通して、ライフコースを含め、自分が学びたいことややりたいことについて深く考えることができました。留学の準備期間や留学中には様々な面で予期せぬトラブルや困難がありましたが、留学の目的を思い出すことが、そのような困難を乗り越える精神的な支えにもなりました。
    次に、留学前にコンフォートゾーンから抜け出すことを意識していて良かったと感じます。すべてが成果につながったわけではありませんが、ある程度の心理的な負担やリスクを伴ってでも自分から個人や組織に働きかけやすくなり、限られた留学期間がより自由で納得のいくものになったと評価しています。
    さらに、留学前に英語で開講される講義を積極的に受講していたことが、留学中の学業の基盤になりました。具体的には、90分間英語で専門科目の講義を聴き続ける練習や、レポート作成・発表・ディスカッションを英語で行う練習を留学前にしていたことで、留学先では講義の内容そのものに集中しやすくなったり、レベルの高い講義に挑戦しやすくなったりしました。
    最後に、講義や日常生活を通して日本の文化・社会に関心や疑問を持ち、理解を深めておくことが、留学先での講義や異文化交流に役立ちました。私の場合、とりわけ留学生向けの講義では、各国の教育制度や現状を比較して発表する機会が多くありました。また、他の留学生や現地の人と交流する際に、様々な角度から互いの文化・社会について話したり聞いたりすることが日常的にありました。医療保険制度や労働問題、犯罪といった踏み込んだ話は特に、知っていたからこそ相手に伝えられたと思うので、日本の文化・社会について関心を持って生活してきて良かったと感じます。

    <留学して良かったこと>
    留学して良かったこととして、学業面に焦点を当てると、まず、実習科目や学校訪問を通じて、現地の特別支援学級・学校や保育園を見学するという貴重な機会を得ました。それまで本や論文でしか触れることのなかった支援の様子を自分の目で見て、生徒や園児と交流したり、教員の方々と議論したりすることができました。他方で、教育先進国とされるフィンランドの特別支援教育にも課題はあり、そのような課題を私が見学した学校で考察することができたのも大きな収穫でした。
    また、講義全般が興味深く、成長できるものであり、留学して良かったと感じます。北欧の特別支援教育や児童福祉分野について、最新の知見にも触れながら体系的に学び、教員に質問したり、作成したレポートや発表のフィードバックを受けたりすることができました。加えて、ほとんどの講義がディスカッションやリーディングサークルといった学生主体の活動を取り入れていました。金沢大学では、特別支援教育や児童福祉に関する科目は一般的に日本語で開講されており、留学生が受講することは稀であるため、ユバスキュラ大学の講義で他の国の学生と議論できたことは刺激になりました。さらに、レポート作成や要約、文献収集といった英語のアカデミックスキルが向上し、国内外の大学院に進学して児童福祉や特別支援教育に関する学びを深めるという選択肢を現実的に考えられるようになりました。

    <おわりに>
    派遣留学を検討している人が、納得のいく選択ができることを願っています。最後に、留学を実現するにあたり、金沢大学・ユバスキュラ大学の教職員の方々や奨学金のご支援を賜った財団、友人、先輩方をはじめとして、たくさんの方々に様々な形でお世話になりました。厚く御礼申し上げます。